2012年6月17日日曜日

旅の備え

明日から久々の旅行に出ます。前回の帰省から、なんだかんだで怒濤のように過ぎた1年でしたが、その間に小さな旅行一つ挟むこともなくとどまって狭いエリアを東奔西走していたのは、ここ20年の中では初めての経験であります。改めて考えると、旅や旅行のあり方というか、出来ることというのも時代と共に変わったというか何というか。準備もだいたい出来たし、思うところとVPNに申し込んだ話を少し。

「旅行に何を持って行くか」というのは、よく聞かれる質問で、また自分自身悩むこともあります。基本的には優先順位をつけていくしかないけれども、その目安として自分は、1)絶対必要なもの、2)確実に必要なもの、3)ないと困るもの、4)あれば便利なもの、という感じでカテゴライズをしていきます。現地調達の可能性や代替性に応じて、持っていく意味のあまりないものは切っていくという感じであります。このあたりは価値観や旅の目的、スタイルによって変わりうる要素でもあります。

ここ10年で変わったことといえば、携帯やらパソコンを旅先まで持って行くようになったこと、またネット上の情報をあたることで地球の歩き方やロンリープラネットのような古くて断片的な情報に頼らなくても済むようになったこと。便利になった一方で、持ち物が増えて重くてかったるくなりつつあるのは否めません。インターネットカフェで、といってもセキュリティ上の信頼性を考えると気兼ねなく使う気にもなりません。それに今回は帰省して家族のパソコンのメンテナンスを一気に済ませるつもりなのと、ちょっと長めの休暇なので、自分のノートは必須。

経由・滞在する北京での一応最低限のアクセスと、無料のwifiもぼちぼち使う予定のためセキュリティを考えて、VPNとやらのサービスに申し込みました。purevpn というところ。大丈夫っぽい、というだけで、実際のところ中国の検閲をかいくぐって現地で使えるのか、イタチごっこなのでタイミング次第、ふたをあけてみないと分かりません。値段的にはスタンダード(月30gbまで)で約10ドル/月、25ドル/3ヶ月、45/ドル6ヶ月、75ドル/1年、とまとめて支払うとまぁ普通に段階的に安くなるという感じ。倍払う気があれば転送容量の制限なしのプランも。

ここを選んだ理由は、カードやPayPal だけじゃなく Moneybookers も使えるということ、潰されても24時間以内、通常は1時間以内になんとかしてるよ、という宣伝文句。デメリットとしては、アジア圏内のサーバが少なく、また日本にもないので、日本のストリーミングがみたい海外在住者にとっては別のトコロを選ぶともう少し使えるかも。とにかく、ここ数ヶ月Moneybookersに使う当てもなく眠らせたままの残額があったのでそれを使うことにしました。

が、支払いの段階でエラー、お金がMoneybookersの口座から抜かれたのに、「サポートにご連絡を」の表示が出て、購入済みにならない・・・。タイムラグがあるだろうからと思って10分待っても状況に変化なし。どうしよう、と考えつつとりあえず書かれていた連絡先にメールを打って、反応をみてみるも15分ほど経っても自動返信以外音沙汰なし。仕方がないので、サポートとチャットでお話しすることに。

週末だからちょっと待つかなと思ったけど、わりと普通にサポートの人はいるみたいで、チャットに入った段階で、担当者とお話開始。んで、担当者曰く「特に初回の支払いとサービス利用の本人認証に関しては人力でやっていて、確認用の書類を送る必要があって、問題がなければ全て済むのに1時間くらいかかるかも。すったもんだがあっても1日もらえれば十分」とのこと。それから数分後には、「番号を部分的に隠したクレジットカードと身分証明書のスキャンか写真を送ってくれい」というメールが入ったのでメールで送信。クレジットカードで払った場合は、そのクレジットカードだけで済むみたい。ともあれ、夕食を作っている間に入金完了&サービス利用開始のお知らせが来ていたので、この手の認証を要求するところとしてはまずまずの早さ。先に本人確認があると言ってくれればびびらずに済んだんだけど。

ネットワークとかVPNは自分の得意とするところではないけど、Windows、android、iOs 共に設定は難易度の高いものではなく、あっさり終了。サーバの切り替えがちょっと面倒なのでWindowsにはpurevpnが出しているクライアントソフトを入れました。スウェーデンからスウェーデン・イギリス国内のサーバ経由でアクセスする分には非常にストレスもなく今のところ快適。まぁこればっかりは長期的に使わないとなんとも言えないのかな。

2012年6月16日土曜日

最高裁判決-その2

頭が冷えてきたので、昨日久々に書いたものの続きを少し書くことに。マンガの所持が児童ポルノにあたるとして起訴されスウェーデンの最高裁まで争われた事案。空想か実在か、みたいな議論もあるわけで、このあたりのところは正直自分の現在の関心分野ではなかったので、はしょっておりました。最高裁が判決とは別にコメントも出していて、それが非常に端的なのでそれをそのまま挙げることにします。

判決においては、描写それ自体はポルノグラフィでありまた児童を描写しているものと認定された。しかしながら、それらは現実の児童と混同され得ない空想上の存在に関してのものである。描写の所持を処罰することはそれ故に、表現の自由及び情報享受の自由の制限を導いた主たる目的にとっての必要不可欠性を逸脱するものである(いわゆる比較衡量論)。憲法の定めうるところに従った当該法律の解釈により、本起訴は却下された。[参照]

この一文を考えると、昨日のさらっと読んで書いたものは、部分的には日本のガチガチした憲法解釈からから見た感覚的なものなのかもしれません。(日本でいうところの厳格な合理性の基準に近い)比較衡量は確かにしてるけれども、主観的な権利として認められるかが論じられていて、あんまり抽象的な所をコネコネとしてない状態。法律やその目的自体の合理性を審査をする必要がなければ、そこにぶっとんで行く必要は本来必要ないのかも。自分スウェーデンでこのあたりはやってないので、機会があればという感じ。直感は大切なので、書いたものは、とりあえずそのまま取っておくことにしましょう。

判決も触れている通り、結局の所、ポルノグラフィと児童ポルノグラフィをあえて分ける場合、未成年者というところに刑法上の特別な保護利益があります。そして未成年者のように意志や決定能力が完全ではない場合、本人や親権者の同意をもってしてもその同意能力を安易に認めるべきではありません。しかしながら、そこのところからぶっ飛んで犯罪に利用される恐れとか、1つの描写が全ての未成年者に被害を及ぼす、といったところまで保護利益として認めるとなると、およそ道徳的判断と区別のつかない連関というか良く分からない論理を刑法の世界に持ち込むことになります。まぁこの辺はもっときちんと書いてる人も多いし、危ないよね、というところでここは止めておきましょう。

それよりも実際の被害をどうにかせい、という問題はあります。事件として処理するにもリソースが不足している上に、警察や検察、司法のやる気のなさ、それに対する不信感に伴う被害の無申告やら何やらで結局の所、現実の児童ポルノやら性犯罪やら人身売買に対しても十分な対応は出来ていない。それと一緒くたにして、同じ重さの犯罪として扱うとなると、本人の証言や難しい証明のいらない簡単に証明できる犯罪を検挙することに警察や検察が一生懸命になってしまうのは目に見えている。どこかの国の警察が、麻薬やら大麻やらのジャンキーを捕まえて検挙率や拘置所の稼働率を上げるのと大差ありません。そんなことでは結局目的は何ぞや、その前にやることがあるのでは、というところに話が戻ってきてしまいます。

正直、罰金刑ながらも地裁・高裁における(予想外の)有罪判決が出ていたのであまり過度な期待をしないようにしていました。当の本人が無罪判決を受けてほっとした反面で、失った時間や費やされた労力を考えると手放しでは喜べません。また、最高裁の判断が先例になるとはいえ、地裁・高裁レベルでの有罪の判断を考えると限界事例においては保守的な解釈を行う可能性が結構あることが容易に想像できます。最高裁まで徹底的に争ったのは結局の所有罪を得た場合に失うものが大きいからで、生活のかかっていない人が実際に争えるかはやはり微妙です。多少なりとも人権が機能しているスウェーデンでさえこれですから、裁判を受ける権利を権利として受け取る人が少なく、ましてや人権そのもののも認められにくい日本でいけるのかというのはやはり悩むところ。ともあれ一段落です。

2012年6月15日金曜日

050 plus

050 plusを使い始めてから早2ヶ月、こっちのの自宅のメインで使っているIP電話よりも国際電話の音質が良く、ぼちぼち安定しているので、自宅の電話をやめるか考え中。自宅の電話が月1200円、ネットをぼちぼち使っているスマホより高いので、正直メリットがあまり見いだせない。それにかかってくる電話の98%がセールスで、1.9%が間違い電話。残り0.1%と考えると、とりあえず携帯で受けてこっちからかけ直してもおつりが来るし、かけるのも携帯からの方が安い。正直お疲れ気味。

2012-06-15 22-15-42

Windows版も一応出ていて、アップデートやことあるごとにアドレス帳がクラッシュするとか、atokとの相性が激悪とか、接続が落ちた後自動的に復帰してくれないとか、まともに機能がついていないとか、デザインがどうしようもないとか、そういった不満に目をつぶれば一応なんとか使えるというレベル。ただ、お値段的には不満じゃないし、余計なことをして料金が高くなったり、音声品質が犠牲になるくらいなるくらいなら、このくらいのものでいいのかもしれません。

本日付の最高裁判決について (修正)

今日(2012/06/15)、マンガというかエロマンガの所持が児童ポルノグラフィを規制する刑法に反するとして訴追された事案(B 990-11)について、スウェーデンの最高裁判決が出ました。要旨からすると「児童ポルノグラフィに該当する内容を有するマンガとしての描写は、それが現実の児童と考えられる描写を除き、スウェーデン憲法の定める表現の自由と情報アクセスへの自由に鑑み、罰せられない」と。結論はともすると当然無罪。とにかく長く時間がかかったけど、これで一段落。

近からず遠からず事案を見てきた自分にとっては、色々言いたいこともありますが、それはともかくとしてささっと目を通していくつか気になったポイントを。

・論理構成

当該法律が基本的人権に何らかの制約を課すものか否か→YES→当該行為が表現の自由ないし情報享受の自由として認められるか→YES→当該行為に規制をかけるだけの著しい必要性(緊急性ないし重大性)が認められるかどうか→NO→権利が優先するので法律の適用はない=規制の合理性やEU規約との整合性についての判断はしない。

法律の違憲審査をするまでもなく、憲法上の人権として認められる限りオッケーというアプローチは、法律の違憲無効の判断を伴わない点ですっきりしないかもしれません。しかしながら、1) 弁護側としては余計な立法技術とか理論まで踏み込まないでも挙証が十分に出来る、2) 裁判所としても余計なところまで審査しなくていいので日本で言うところの違憲の判断が出しやすい、3) 無効とすると一定の規制がかけられなくなって困る場合でも権利性を保ちつつ法律は一応維持できる、4) 基本的人権の法に対する優位性という建前と理論的に整合する、というのが思いつくところ。

・39点中38点の描写は現実のものと考えられるとは認められない。

ともあれ判決では、著しい必要性(緊急性ないし重大性)の判断としては、当該描写が現実のものと信じるに足りるか、現実のものと考えられるか否かによって、その判断を分けています。メルクマールになる先例を作るために1点だけ分けた感じがしなくもないですが、実際の所は分かりません。

何故に現実のものと考えられるような、というとはっきりは言ってないものの、1) 当然現実の写真、2) ノンフィクションと言っても過言でないもの、3) CGが一部もしくは全体に使われていて写真と区別する意味に乏しいものや模写、ということが念頭にあるのではと思われます。

・残りの1点は現実のものと考えられる描写であるが、状況に鑑み所持が合理的な場合には、処罰の対象となる行為とはならない。

1点はかなり際どい描写として認定されてますが、描写がどのようなものかは分かりません。このあたりが表現の自由を規制する場合の古典的な危ない点ではあります。ただ判決は、行為者の一定の状況如何によっては、同法の定める適用除外にあたることを指摘した上で、本件においては、当該行為者が日本のマンガの研究や批評を行っていることをもって、その事情にあたるとわりとさっくりと結論づけています。なので、結局この法律がどうよ、ってところまではあまり踏み込んでいません。

とりあえず、弁護を引き受けて資料を受け取っただけで捕まるとか、研究レポート用にまとめるだけで刑務所送り、という状態にはならない、という点ははっきりさせた点で一応一定の評価ができます。

いずれにせよ、意志能力や行為能力が限定されている未成年者の保護の必要性、被害を伴う(間接的被害について広く認める主張もありますがそれについては判決では蹴っています)描写が写真以外でも考え得ることに鑑みると、落としどころとしてはまずまずという印象を受けました。細かい内容を書くモチベーションも時間もないのでとりあえずそんな感じです。

[2012/06/16 自分で読んでも意味不明な所を加筆・修正]
[2012/06/16 思うことがあったので続編、最高裁判決-その2を書きました]