2008年6月5日木曜日

国籍法


報道によると、めずらしく最高裁が国籍法3条に関して違憲の判断。今の生活で若干関係していて前々からチェックしてたので、少し紹介しておきます。

日本人同士カップルや夫婦の子供は日本人になる。当然と考えるか何故と考えるかは別にして、血統主義といって日本の場合そのような考え方をベースに国籍がもらえることになっています。これに対して出生地主義といって、生まれたときに生活の基盤があるからこそ国籍がもらえるという考え方を取る国もあります。なので、両親が日本人で子供が異なった国籍を取得することは可能。日本だと成人の場合二つの国籍を持てない建前になっています。二重国籍を認める国がある一方で厳格な国もあります。

とはいえ、日本人と外国人との間に生まれた子供は必ずしも日本人になるわけではありません。一昔前は父が日本人でない場合日本国籍を取得できませんでしたが、それも今は昔、一応どちらか片方が日本人であればオッケーという話になっています。ただ子供が他の国籍も取得した場合、出生届とは別に国籍留保の届出をしなければいけないので要注意。頭の痛くなる手続きも待ち受けています。

母が日本人の場合、子供と母の血縁関係が明白ということで問題ないとされていますが、父の場合話が異なってきます。婚姻中の嫡出子推定300日規定という今をときめく話題の絡みですが、それはともかく結婚している場合は、法律の名の下に推定されてしまいます。日本の法律上、推定するのと見なすのとは大きく異なっていて、推定されただけであれば反証可能です。

少し話が脱線しますが、300日規定の問題は、反証として立証しなければならない事柄が当事者に過度の負担になるという手続き上の問題が根底にあります。加えて真実性と家族制度の安定性を同じ天秤にかけた上での判断。真実に勝るほどの価値を家族制度に認めてきた不正義度の度合いからすると、立法府が解決すべき範疇で、どこかの法務大臣が思いやりで認めてあげることで済まされることとは異なります。国籍法に話を戻すと、ともかく結婚している場合には、こうした推定があるので子供は日本国籍が取得可能であります。

じゃ、結婚してなくて父が日本人の場合はどうかというと、子供が自分の子供であると認知しなければいけません。生まれる前に父が認知することが出来れば、日本国籍を取得できることになっています。ここで、国籍法3条の問題があがってきます。

(準正による国籍の取得)
第三条 父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。

この法律の規定からすると、生まれた後に認知された子供は、両親が結婚した場合だけ国籍を取得できるということになります。両親が結婚しなかった子供にも「かわいそうだから」国籍を認めてあげようとかいう次元の話ではなく、両親の結婚の有無によって国籍の取得の可否を分ける理由はあるのかどうかという問題であります。法務省は「日本社会との結びつき」が婚姻により強くなると主張していましたが、先の血統主義の考え方からするとかなり苦しいものがあります。子供の身分関係を定義するほど重要な意味を婚姻に与えるのであれば、婚姻そのものを実質的に定義しなおす必要に迫られるはずです。つまり、書類上結婚しているだけではなく実質的な婚姻の状態を鑑みる必要が出てきます。そうすると、法律婚と事実婚の境界線もやはり議論したくなるところ。一審判決はこの辺を議論していたので、判決の射程はかなり不安定というかどこまで適用できるのか謎が残っておりました。他方、子供が自ら選択しうる立場にない事柄によって国籍取得の可否が左右されるというのは、やはり平等じゃないよねという話になります。

最高裁が違憲だと判断しても、んじゃこれからどうするのかという課題は残ります。あれこれ要件をつけて日本人っぽい子供だけに日本国籍を与える、国籍法とか家族法とかの絡みを出来るだけ放置してきた政党からするとそんな話になるのかもしれませんが、法律上のレベルで国籍とアイデンティティを絡めることには疑問を覚えます。

スウェーデンというかヨーロッパにいて考えさせられるのは、外国人と自国民のメルクマールがかなり少ないということ。例えば、外国人登録証なるものは特に必要ないですし、職安でも普通に登録して仕事が探せます。EUに加盟している以上、自国民とEU諸国の人とは基本的に同等の権利を認める必要があるということが背景にあるのかもしれません。もちろんスウェーデンにも独自の問題はあります。EU諸国民とその他の違いもあります。それはまた機会があればちょこっと書きましょう。

[ 更新日時:2008/06/08 15:57 ]

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